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「合わない人」をマッチングするサービスが社会に必要な理由

Photo by Lobian

この人とは「合わないな」と思うような相手は、誰にでも一人くらいはいるだろう。

きっと理由は様々。政治、思想、宗教といった信条が違っているから、というような大層なものもあれば、ファッション、話し方、趣味、といったような小さなものが積み重なってそのように感じるケースもある。

そして私たちは、彼らとはできる限りコミュニケーションを避け、徐々に距離を置くかもしれない。
しかし実は、現代ではこうした生き方は危険だ。

好きなもの、好きな人に囲まれた生活は、自分自身では気付かない間に、私たちの世界を急激に狭く偏ったものにしてしまう可能性がある。

「好ましい」情報だけが流れてくる情報社会

私たちは住む場所や着る洋服を自分で選択している。

そして現代では、私たちが目にしたり耳にしたりする「情報」も同様だ。

情報収集の主なメディアがインターネットに代わってすでに久しいが、インターネットを通して入ってくる情報は誰にでも同じように届けられるのではない。
自分自身の振る舞いや生活の仕方に応じて、情報は選択的に変化しているのである。

たとえばFacebookで「いいね!」を押す、Twitterでリツイートする、そうした行動はただただ流れ去って消えてしまいはしない。
ひとつひとつがデータベースに記録され、私たちそれぞれの生きる世界を細かく定義するために使われるのだ。

近いものはより近く、遠いものはより遠く。

好むと判断された情報や広告は私たちに頻繁に届けられるようになり、逆に嫌いなものや思想の合わないものは自然に目に触れる回数が減らされる。
そして私たちは遠い世界を忘却していくのだ。

こうして情報がキュレーションされることは一見とても便利なよう見えるが、裏を返せば、私たちを卑近な世界に偏向させ、閉ざしていくことと同義かもしれない。

こうした性質を持つインターネットでは、思想の近い人たちの間では、頻繁に情報がやり取りされ、外部と遮断された同質のコミュニティーが作り上げられていくのだから。

Hi From the Other Side

1920

Photo from the Atlantic

インターネットのこうした構造が露わになったのが、2016年のアメリカ大統領選だ。

SNSを主戦場とした新たな時代の選挙戦、日本ではトランプ氏の人種差別や性差別の問題が大きく取り上げられたが、実はこうした情報はアメリカのトランプ支持者の元にはあまり届いていなかったという。
アルゴリズムが一人一人の偏好を学習した結果、支持者にとって好ましくない情報は排除されたのである。(この問題はNew York MagazineのDonald Trump Won Because of Facebookが詳しい)

インターネットは人々をつなげる仕組みであったはずが、むしろ人々を切り離し、別個の世界に閉じ込めてしまっているのだろうか。
お互いの立場を理解することなく続いていく「ヘイト合戦」を目の当たりにして、当時ハーバードビジネス・スクールの学生であったHenry Tsai氏は、大きな違和感を感じたという。

反対の立場の人を悪者扱いすることは簡単だ。でもそれは何かおかしい。もちろん相手に賛同しなければならない訳じゃない、だけど理解するための時間すら作ろうとしないなんて、全くフェアじゃない。This election has divided the country. Getting Clinton and Trump voters talking is one way to heal.

そう考えた彼は、アクションを起こした。
両陣営の支持者が一対一で対話をできる場を用意するために、信条の違う人同士のマッチングサービス、Hi From the Other Sideをオープンしたのだ。

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このサービスの利用は簡単だ。ただ自分がどちらの支持者かを明記して登録し、あとは対立候補の支持者の紹介を待てばいい。そこからは直接メールのやり取りをすることになる、もちろん二人がそうしたければ、会って話してもいい。

サイトのトップページにはこう記されている。

選挙が終わって、僕達は自分たちのエコーチャンバー(※)の外に出て、反対候補の支持者たちと対話をしようと思った。説得するためじゃない、理解するためだ。

※エコーチャンバー(echo chamber):反響する部屋。ある意見や信条が、一般的に正しいかどうかに関係なく、近い思想同士の閉じたコミュニティの内側で賛同を得ることで、反響され増幅されること。

異なるものには「あえて」向かい合わなければならない

Tsai氏の言うように、私たちはともすればエコーチャンバーの中で閉じた世界を作り、そこに閉じこもってしまうかもしれない。
もちろん誰もなりたくてそうなっている訳じゃない。ただ日々インターネットやSNSを見て、好きなものを好きだと言っているだけで、自分こそが正しいと思い込むように差し向けられているのだ。

「合わない」人と対峙し、対話し、理解しようとすることが、確かに骨の折れることには変わりはない。しかしこうしている間にも、おせっかいなアルゴリズムは絶えず私たちを小さな世界に押しやっていく。

もしそれが我慢ならないと思うのならば、私たちは「あえて」外に出ていく高邁さを持たなければならない。

▶︎Hi From the Other Side
 


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